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大きなお金が入ったとき、どうするべきか ― 成功報酬と節税の一般論

人生のなかで、ある日まとまったお金が入ることがあります。 会社の成功報酬、事業の売却益、相続財産、あるいは投資の利益。想定外の大金を手にすると、人は少なからず「どう使うか」「どう守るか」を考えます。

節税の誤解とその危険性

よく耳にするのが「高級車やクラシックカーを買って減価償却すれば節税になる」という話です。

しかし、税務の原則は「事業に必要かどうか」です。クラシックカーや希少車は資産価値が下がらない、むしろ上がる場合もあるため、美術品や骨董品と同じ扱いを受け、減価償却を否認される可能性が高いのです。つまり「税務署に説明できるかどうか」が鍵になります。

本当に有効な資産活用法

1.法人化・会社経由で受け取る

法人税率で課税されるため、個人で受け取るより柔軟なコントロールが可能です。

2.退職金制度の活用

将来の退職金として積み立てれば、経費算入が可能で、老後の備えにもなります。

3.保険商品による利益繰延

逓増定期や長期の積立保険で利益を時間的に平準化できます。

4.不動産・設備投資

減価償却を活用しつつ、資産としても残すことができます。

5.人材や仕組みへの投資

人を雇い、教育し、組織を強化することは、最も健全で持続的な「節税」でもあります。

使い方で決まる将来の違い

一度に大きな額が入ると、派手な買い物に走りたくなるのは自然な心理です。

しかし、税務署は常に「実態」を見ます。見せかけの節税策は、後に修正申告や追徴課税で跳ね返ってくることが少なくありません。

一方で、堅実な方法を選べば、お金は単なる「一時の報酬」ではなく、将来の基盤に変わります。節税は「逃げ道」ではなく、「お金をどう未来につなげるか」という発想で捉えるべきでしょう。

冷静な判断で確実な資産管理を

大金が入ったときにこそ、冷静に考えることが求められます。クラシックカーを買うのは趣味としては楽しいかもしれませんが、節税策としては極めて危険です。むしろ、法人化・退職金・保険・不動産・人材投資といった堅実な仕組みを整えることが、結果として「お金を守り、増やす」最良の方法になるのです。