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弁護士に依頼する際に必ず出てくるのが「着手金」と「タイムチャージ」の問題です。多くの方が「なぜこんなに複雑な料金体系なの?」と疑問に思われることでしょう。しかし、これらの仕組みを正しく理解することで、安心して弁護士に依頼することができます。

着手金と相談料の違いを知っていますか?

着手金は、事件に着手するために必要となる基本的な費用です。

ここで重要なのは、着手金は成功・不成功にかかわらず発生するという点です。弁護士が依頼を受け、調査や交渉、書面作成などに取り組む体制を整えるための対価であり、依頼者の言い分を前提に法的整理を開始するために不可欠なものです。

一方で、着手前の段階では、弁護士は依頼者の主張をもとに一般的な見立てや概算計算を行うにとどまります。そのため、専門的な調査や反証の検討などは原則として行いません。この範囲での対応は「法律相談」となり、事務所ごとの相談料基準に従って費用が発生します。

つまり、相談料は「一般的なアドバイス」のための費用、着手金は「あなたの事件に本格的に取り組む」ための費用と考えていただくと分かりやすいでしょう。

作業の見える化で安心の料金システム

近時は、着手金に加えてタイムチャージ方式を採用する法律事務所も増えています。

これは、着手後に発生する具体的な作業(メール・電話でのやり取り、書面作成、調査、交渉など)を、時間単位で明確に積算し、依頼者にご負担いただく仕組みです。

依頼者にとっては費用構造が透明化され、「何にどれだけの時間をかけたのか」が明確になります。また、弁護士にとっては作業量に応じた適正な対価が確保されるというメリットがあります。従来の「結果に応じた報酬」だけでは見えにくかった弁護士の日々の作業が、時間という分かりやすい単位で可視化されるのです。

保険の特約活用で費用負担を軽減

交通事故案件などでは、弁護士費用特約が利用できる場合があります。

その際には「相談料の上限」「着手金の扱い」「タイムチャージの支払可否」など、保険会社の基準と弁護士事務所の基準とを調整する必要が生じます。

特約がある場合でも、事務所側は独自の費用規定を適用するため、依頼者・保険会社と事前に丁寧な説明・合意形成を行うことが大切です。「特約があるから安心」と思っていても、実際には自己負担が発生する可能性もありますので、依頼前にしっかりと確認することをお勧めします。

弁護士費用の仕組みは複雑に見えますが、それぞれに合理的な理由があります。不明な点があれば遠慮なく弁護士に質問し、納得した上で依頼することが、よりよい解決への第一歩となります。