法律実務の現場では、一度終わったと思われていた任意交渉が、数年後に再燃するという事例が少なくありません。
その背景には、「交渉を法的に終わらせる」という視点が欠けていたことが多くあります。
たとえば、相手方との間で交渉が行き詰まり、実質的にやり取りが停止した場合、そこで終わったという認識になりがちです。
しかし、示談書や確認書などの書面が残されておらず、また、調停や訴訟といった手続で正式に終局処理がなされていない場合には、法律上は争いが未解決のまま継続していることになります。
特に、「こちらに支払い義務がない」と考えている場合には、債務不存在確認訴訟や調停の申し立てを通じて、争点を明確化し、終局的に整理することが重要です。
これを躊躇してしまうと、交渉は中途半端に放置され、相手方の一存でいつでも再燃されるリスクを残すことになります。
実際、数年後に相手方の担当者が変更され、過去の経緯を十分に理解しないまま再び請求がなされる、ということが現実に起こり得ます。
そうなると、既に終わったと考えていた側にとっては、説明や対応のやり直しとなり、精神的・時間的な大きな負担となります。