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一般企業と組んで医療機関を運営する際に医師が気をつけるべきこと

医療機関の開設や医療法人の設立にあたって、資金や事務運営を支援する一般企業と提携するケースは少なくありません。医師としては診療に専念したいという思いから、経営面の実務を企業側に任せる形をとることもあるでしょう。

しかしその一方で、“名義だけを貸して経営に関与しない”というスタンスを取ってしまうと、後々深刻なトラブルに巻き込まれるおそれがあります。

名義人が背負う法的責任の実態

まず、医療機関の理事長や管理医師として名義を貸すということは、法的にも社会的にも重大な責任を伴う行為です。

仮に自分の知らないところで資金の流用や契約の締結がなされていたとしても、外部から見れば名義人である医師がその責任を問われる可能性が高いのです。

 

また、企業側が経営判断や資金移動を主導し、医師が意思決定から外されているような状態では、名義人である医師が経営実態を把握できないままトラブルの責任だけを負わされるリスクがあります。

トラブル回避のための5つの対策

このようなリスクを回避するためには、医師側としても次の点に十分注意を払うことが必要です。

  1. 法人の通帳・契約書・議事録等の内容を自ら確認すること
  2. 資金の流れや経営判断について定期的に報告を受ける体制を整えること
  3. 理事会などの意思決定機関において、主体的に発言し記録を残すこと
  4. 企業側との契約関係を明確にし、役割と責任の分担を文書化すること
  5. 「名義だけ」の関与には絶対に応じないという基本姿勢を保つこと

診療の質を守るための経営参画

医療機関は営利性のある事業であると同時に、公共性の高いインフラでもあります。

医師が経営の中核に関与し続けることは、医療の質と安全を守るうえでも欠かせない視点です。

 

医師としての本業に集中するためにも、名義や立場だけを提供するのではなく、経営にも一定の関心と関与を保つことが、結果的に自らと患者を守ることにつながります。