Column

医師名義で医療機関を経営する際に企業側が心得ておくべきこと

近年、一般企業が医療機関の運営に関与する場面が増えてきました。

法人が資金や運営ノウハウを提供し、医師が理事長や管理医師の名義を担うという形態は、開業支援や医療法人設立の場面などでよく見られる形です。

ただ、医師の名義を借りていればそれで足りると考えるのはとても危険なことです。

医療機関の経営は、高度な公共性と法的責任を伴うもので、形式上の名義ではなく、実質的な責任の所在や、きちんとした合意があるかどうかが重要な判断要素となります。

医師との信頼関係が崩れたとき、何が起こるのか

企業側が理事会や資金の流れを実質的に支配してしまい、医師の了解を得ないまま人事・契約・財務の決定を進めてしまった場合、医師との信頼関係が崩れ、重大なトラブルに発展する可能性があります。

その結果、紛争に発展したり、法人運営そのものが継続困難になったりすることも珍しくありません。

信頼と協調を軸とした経営体制こそが長期安定の鍵

こうしたリスクを回避するためには、企業側が常に留意すべきポイントがあります。

それは、医療機関の「名義人」である理事長や管理医師と丁寧に合意を取りながら、日頃から十分なコミュニケーションを取ることです。医師が意思決定の過程から排除されているような運営体制は、結果的に双方にとって不利益となってしまいます。

 

また、資金提供や事務運営を担う立場であっても、医療機関のトップはあくまで医師であるという点を明確に意識し、支援者・協働者としての立場をわきまえた関わり方が求められます。

名義だけ整っていれば足りるという発想は、実態と整合しない運営となり、法的・社会的な責任を問われる結果となる可能性があります。

医療分野に関与する企業にとっては、「名義」と「実質」のバランスに細心の注意を払い、信頼と協調を軸とした経営体制を構築することが、長期的な安定につながると言えます。