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相続で「争族」にしないために——遺言書という最大の備え

人は誰しも、いずれはこの世を去ります。

そしてそのときに残された家族にとって避けて通れないのが「相続」です。

相続は本来、ご家族への思いやりと感謝を形にする最後の手続きであるはずです。

しかし現実には、遺言書がないことで「争族」となり、家族間で深刻な対立に発展してしまうことが少なくありません。

財産の多さよりも大切なこと

遺言書は「資産家だけのもの」ではありません。よく「うちは財産が少ないから、遺言書までは必要ない」と思われがちです。

しかし、兄弟姉妹が複数いる場合、そしてそれぞれが家庭を持っている場合、金銭的な利害が絡むと、思いがけず感情的な対立が起こりやすくなります。

「うちの子たちは仲が良いから大丈夫」という言葉も、弁護士の立場からすると多くの場合、あてはまりません。

実際には「子どもが2人以上」「相続税がかかる程度の財産がある」場合には、遺言書を作っておくことを強くおすすめします。

元気なときこそ遺言書の準備を

なぜ、遺言書を書く人は長生きするのか?

私たち弁護士の実感として、きちんと遺言書を残している方は、なぜか長生きされる方が多い印象があります。

これは、日頃から「備え」を意識し、心の整理ができていることが、生活にも好循環をもたらすからかもしれません。

逆に、突然亡くなられた方は、ほとんどが遺言書を準備しておらず、相続をめぐって家族が混乱するケースが多いのです。

相続の準備は60歳がひとつの目安。

人は60歳を過ぎると、認知症や病気など、判断能力が低下するリスクが高まります。ですから、60歳を迎えたら「元気なうちに遺言書を作っておく」ことが、大切なご家族への最初の思いやりだと考えてください。

弁護士・税理士など専門家と一緒に作る確実な遺言書

遺言書の作成には、公正証書にしても数十万円程度が一般的です。

仮に10億円の資産があっても、相続トラブルで弁護士費用や訴訟費用をかければ、その何倍も失われる可能性があります。

事前に準備しておくことは、結果的に節税対策にもなります。

弁護士・税理士など専門家への相談が鍵となります。

遺言書は書き方を誤ると、逆に無効になったりトラブルの火種になることもあります。

できれば弁護士や税理士など、相続に詳しい専門家に早めに相談することをお勧めします。

家族がもめないために。そして、ご自身の大切な財産を守るために。遺言書は、人生の終盤における最大の「備え」となるはずです。