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「困ってから弁護士」はもう古い?経営支援と予防策としての弁護士活用

「困ってから弁護士」はもう古い?

「弁護士は困ってから頼むもの」——この言葉は、多くの方の中に根強く残っている意識だと思います。

これは、おそらく弁護士の数が非常に限られていた時代、そして日本全体が右肩上がりで成長していた高度経済成長期の名残でしょう。当時は、法的トラブルに直面する企業の方が少なく、「何かあったときに備える」という意識が広まりにくかったのだと思います。

しかし今は違います。経営者としての「経営力」、つまりリスクを見極め、適切に備える力が問われる時代です。

弁護士=「裁判の人」ではない

実は弁護士の中には、MBA資格を取得し、法律だけでなく経営そのものについての知見を持ち、日々の相談業務を中心に活動している者も少なくありません。それでも「弁護士=トラブルが起きたら頼む人」というイメージが根強く残っています。

たとえば、ある弊所の弁護士が医師の集まりで登壇したときのことです。テーマは「弁護士は困ってからではなく、経営相談の段階で活用することが大切」という話だったにもかかわらず、講演後の名刺交換では、

「先生すごいですね、医師免許に加えて弁護士の資格まで。何かあったときにはお願いしますね。」

——と、典型的な“非常時用”の弁護士という扱いをされることがありました。正直、この段階で話の趣旨が十分に伝わっていないと感じることも少なくありませんでした。

変化する弁護士活用の形

ところが、最近ではこのような傾向も大きく変わってきています。「できる限り早期に、低コストで、無駄なトラブルを防ぎたい」「一方通行ではなく、双方向のやりとりができる弁護士に相談したい」

そんな考えを持ってアプローチされる経営者の方が、明らかに増えてきました。むしろ、そういった方々こそが現在の主流になりつつあります。

特にここ数年は、AIの普及もあり、皆さんが事前に情報収集・学習をしたうえで、

「どうすれば揉め事の芽を早いうちに摘み取れるか」
「どこで弁護士の力を借りれば、最も効率的か」

と、費用対効果をきちんと考えた上で動いておられる印象を受けます。

今、弁護士に求められる新しい役割

弁護士の使い方は、確実に時代とともに変化しています。「トラブル対応」から「経営支援」へ。そして、「裁判の代理人」から「予防と戦略の相談相手」へ。

時代が変わった今だからこそ、弁護士に対する意識もアップデートする価値があるのではないでしょうか。