離婚・別居に際して必ずと言っていいほど問題になるのが、婚姻費用や養育費の算定です。特に、開業医の先生方やその配偶者の方々、あるいは夫婦双方が高所得であるというケースでは、初期の対応こそが今後の見通しに大きな影響を与えます。
家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」は、年収2,000万円までを前提としたものに過ぎません。しかし、開業医の離婚の実務ではこれを超える年収が問題となることが多く、その場合にはいくつかの算定アプローチが選択肢として浮上します。
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離婚・別居に際して必ずと言っていいほど問題になるのが、婚姻費用や養育費の算定です。特に、開業医の先生方やその配偶者の方々、あるいは夫婦双方が高所得であるというケースでは、初期の対応こそが今後の見通しに大きな影響を与えます。
家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」は、年収2,000万円までを前提としたものに過ぎません。しかし、開業医の離婚の実務ではこれを超える年収が問題となることが多く、その場合にはいくつかの算定アプローチが選択肢として浮上します。
裁判所の算定表の上限(2,000万円)を基準に、それ以上は考慮しないという立場です。支払う側にとっては有利な方式ですが、受け取る側からすると極めて厳しい結果となることがあります。
この方法では、裁判所が公開してる計算式、すなわち算定表の構成原理(生活費指数・指数比など)に基づいて、実際の収入に応じた計算を行います。ただし、ここには個別の事情や特別費用の考慮が入りやすく、裁判所の裁量の幅も広がります。
特に地方では、高額所得者の実態に調停委員が不慣れなため、同じ主張でも東京と地方とで結果に差が生じることがあります。したがって、東京で管轄が取れる場合には、できる限り東京の裁判所を選ぶことも一つの重要な戦略といえるでしょう。
自営業者や医療法人の経営者など、自身で給与を操作できる立場にある方の場合、「潜在的稼働能力」が問題となります。すなわち、「本来であればどの程度の収入が妥当か」という点について、裁判所が実態を見て判断することになります。
なお、医療法人に関しては注意が必要です。
・持分のない医療法人
法人内部に留保された利益は財産分与の対象とならず、婚姻費用や養育費の算定にも反映されない可能性があります。
・持分のある医療法人
法人の評価額が財産分与の対象となるため、支払側・受取側ともにその評価の方法が重要となります。
もっとも、平成19年以降は新たに設立される医療法人はすべて「持分なし型」となっているため、相続においては有利である一方で、離婚の場面では不利に働く場面も見受けられます。
高額所得者、特に医療関係者が当事者となる離婚・別居においては、婚姻費用や養育費に限らず、医療法人運営や行政対応など様々な要素が絡み合います。
弊所ではこれまで数多くの医師・開業医関係の離婚事案を扱ってまいりましたが、毎回異なる条件が存在し、一概に「正解」を定めることが難しいのが実情です。
それでもなお、これまで蓄積してきた実務経験に基づき、押さえるべきポイントを的確に見極め、依頼者の利益を最大限に守るため、万全の体制で対応いたします。