Column

【第1回】なぜ当事務所は依頼者を選ぶのか――信頼関係なくして良い事件処理はできません

「依頼を断ることはありますか」

法律事務所を運営しておりますと、そのようなご質問をいただくことがあります。

答えは「あります」です。

もちろん、相談者の方に問題があるからお断りするという意味ではありません。当事務所では、依頼者の方と十分な信頼関係を築くことができるかどうかを重視しており、その観点から受任を見送ることがあります。

当事務所はこれまで数多くの法律相談や事件処理に携わってまいりました。その中で感じることは、事件の成否を左右するのは法律論だけではなく、依頼者と弁護士との信頼関係であるということです。

弁護士ができること、できないこと――正しく知ることが解決への近道です

弁護士の仕事は、依頼者の希望をそのまま相手方に伝えることではありません。依頼者の利益を実現するために、法的な見通しを踏まえながら最善の方法を提案し、相手方との交渉や裁判を進めていくことです。

しかし、紛争には必ず相手方が存在します。

こちらが合理的な提案を行ったとしても、相手方が応じないことは珍しくありません。交通事故、離婚、相続、企業法務、医療紛争など、どの分野においても同様です。

相手方が応じない場合には、最終的に裁判によって解決を図ることになります。

ところが、中には「相手方が譲歩しないのは弁護士の責任である」と考える方もいらっしゃいます。

もちろん、弁護士にも責任が生じる場面はあります。しかし、相手方には争う権利があります。どれほど優秀な弁護士であっても、相手方に無理やり合意させることはできません。

そのため、事件を進める上では、依頼者の方に弁護士の役割や限界をご理解いただき、互いに信頼しながら進めていくことが必要になります。

信頼関係があって初めて、困難を乗り越えられる

当事務所では、弁護士と依頼者の関係は単なるサービス提供者と利用者の関係ではなく、同じ目標に向かって進むパートナーであると考えています。

依頼者の方が弁護士を信頼し、弁護士も依頼者の方を信頼する。その関係があって初めて、困難な局面を乗り越えることができます。

逆に、信頼関係が築けていない状態で事件を進めると、本来向き合うべき相手方との紛争だけでなく、依頼者との関係そのものが問題になってしまいます。そのような状況では、十分な法的サービスを提供することはできません。

だからこそ当事務所では、受任に際して信頼関係を最も重要な判断要素の一つとしております。

これは弁護士を守るためではありません。依頼者の利益を守り、最後まで責任を持って事件処理を行うために必要な考え方であると考えております。