医療トラブルの相談を受けていると、「医師が説明をしていなかったのだから、説明義務違反だ」というお話を伺うことがあります。
しかし、裁判や交渉の場面では、「説明義務違反があった」ことを主張し、立証する責任は請求をしている側にあるという点が、非常に重要です。
これは医療訴訟で確立された原則です。
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医療トラブルの相談を受けていると、「医師が説明をしていなかったのだから、説明義務違反だ」というお話を伺うことがあります。
しかし、裁判や交渉の場面では、「説明義務違反があった」ことを主張し、立証する責任は請求をしている側にあるという点が、非常に重要です。
これは医療訴訟で確立された原則です。
説明義務違反を主張する側は、次の点を具体的に示さなければなりません。
これらが明確でなければ、実際には説明義務違反が成立したとはいえません。
医療の現場では、さまざまな合併症や予期しない経過が起こり得ます。
しかし、法的評価の段階で「想定外の事態だったはずだ」「理由を説明せよ」という言い方をしてしまうと、医学的にも法的にも誤導が生じます。
なぜなら、医療行為は常に一定のリスクを内包しており、「想定外」という言葉自体が事実関係の正確な理解を妨げることが多いからです。
説明義務違反を主張するのであれば、
など、「何を根拠にその主張が成り立つのか」を提示する必要があります。
特に文献を引用する場合は、該当箇所にマーカーを付し、本件ではどのように当てはまるのかを説明して初めて、医学的根拠として意味を持ちます。
単に金額や結論だけを提示しても、法的には検討のしようがありません。
ときに、「公共の利害」「公益目的」「投稿の真実性」といった名誉毀損の法理が持ち出されることがありますが、これらは医療の説明義務とは法的射程が全く異なる別次元の議論です。
両者を混同してしまうと、法律問題の整理がかえって複雑になってしまいます。
医療トラブルでは、医学的事実と法律の原理の双方を正確に押さえて進めることが不可欠です。
請求を行う側が、「何を、どのような根拠で主張しているのか」を明らかにして初めて、交渉や解決の議論が成り立ちます。
一方の主張が抽象的なままでは、話し合いは前に進みません。
医療は専門性の高い分野ですから、結果だけを見て評価することはできません。
医学的な背景、診療記録、文献、判断過程などを丁寧に辿ることで、初めて「何が起きたのか」を正しく理解できます。
説明義務の問題は、感情ではなく、事実と根拠に基づいて冷静に検討することが大切です。