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遺言執行者とは何か?相続人が誤解しやすいポイントと、平和な相続のために知っておくべき実務

相続に関するご相談の中で、意外と誤解が多いのが「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」という存在です。

遺言書に名前が書かれているだけで「この人が全てを決めるのでは?」と感じる方もいますが、実は遺言執行者の権限や役割は、一般の方が想像するものと大きく異なります。

本稿では、相続トラブルを数多く扱う弁護士として、「遺言執行者とは何か」「何ができて何ができないのか」「相続人全員が合意したときの扱い」について、実務上のポイントを整理します。

遺言執行者は"遺言を実現するための実務担当者"

民法は、遺言執行者に対して「遺言の内容を実現するための包括的な代理権」を認めています(民法1012条)。

この”包括的”という言葉が、一般の方にとって分かりにくいところです。

ポイントは以下のとおりです。

  • 遺言に書かれた内容を確実に実行するために動く人
  • 名義変更・預貯金の払戻し・遺贈の実行など、実務を単独で行える
  • 相続人の代わりに処理できるが、相続の配分そのものを決める立場ではない

つまり、遺言執行者は「相続の配分を決める人」ではなく、「遺言で決められた内容を確実に実行する人」です。

誤解されやすい「遺言執行者が全てを決められる」という認識

相談現場で最も多い誤解は、

「遺言執行者が気に入らない。変更したい。」 「執行者の意向に従わないといけないのか?」

というものです。

 

結論は明確です。

● 遺言執行者は”相続配分を決める権限”は持っていません。

● 遺言より強いのは「相続人全員の合意」です。

民法907条2項は、相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分け方でも有効と明確に定めています。

つまり、相続人全員が話し合い、合意さえできれば、という希望はすべて実現できます。

  • 「公平に分けたい」
  • 「遺言の一部は使わない」
  • 「遺産の配分を柔軟に調整したい」

遺言執行者がそれを拒む権限はありません。

むしろ、相続人全員が合意したのであれば、執行者はその合意内容を円滑に実行する役割に回ります。

遺言執行者の変更はできるのか?

変更は可能ですが、相続人の話し合いだけで変更はできません。

家庭裁判所で「解任申立て」が必要です(民法1019条)。

そして解任が認められるのは、客観的な”不適任”が認められる場合に限られます。

  • 業務を放置している
  • 財産管理が不透明
  • 遺言に反した行為をしている
  • 病気などで職務遂行が困難

「なんとなく合わない」「気に入らない」という理由では認められません。

遺言があっても、円満に解決したい場合のポイント

遺言が存在する相続でも、実務ではむしろ「相続人全員の合意」によって平和に着地するケースが多くあります。

その際に重要なのは、この4つを丁寧に行うだけで、相続は驚くほど円滑になります。

  1. 財産目録を正確につくること
  2. 相続人間で情報を共有すること
  3. 公平な案を専門家が提示すること
  4. 全員一致の協議書を整えること

弁護士が遺言執行者として関与するメリットは、「中立性」「専門性」「手続の迅速性」が確保されることにあります。

最後に ― 相続を"争族"にしないために

相続は、遺産の額の大小にかかわらず、家族の人間関係が試される局面でもあります。

遺言があることで安心する面もありますが、実際には「遺言があるからこそトラブルになる」ケースも少なくありません。

大切なのは、”遺言””執行者””相続人の合意”の関係を正しく理解すること。

そして、必要に応じて専門家が中立的な立場からサポートすることで、円満で納得のいく相続にすることが可能です。