1. 客観的な証拠を確保する
まず重要なのは、客観的な証拠を確保することです。議事録、通帳の写し、振込記録、メールやメッセージのやり取りなど、社員構成の変更過程や目的を示す資料を保存しておくことが不可欠です。後に争いになった際、これらが最も有力な証拠になります。
2. 内容証明郵便で正式に異議を申し立てる
社員増加や理事改選に不当な目的が疑われる場合には、理事長名または法人名で内容証明郵便を送付し、正式に異議を申し立てることが有効です。この段階で「異議を述べた」という事実を記録しておくことで、後の訴訟や仮処分で手続の無効を主張する根拠が生まれます。
3. 裁判所に仮処分を申し立てる
理事長解任や理事改選の決議が予定されている場合には、裁判所に対して「理事長地位保全仮処分」や「登記手続停止仮処分」を申し立てることができます。これにより、新理事長の登記変更が一時的に止まり、混乱を防ぐことが可能です。
4. 監督官庁に報告・相談する
監督官庁である都道府県の医務課に対して、「不当目的による社員構成変更の疑い」を報告・相談することも重要です。行政庁は、理事長変更届や社員変更届を一時的に受理保留するなど、監督権限を行使して介入することがあります。医療法人の混乱を最小限に抑えるうえで、行政ルートの活用は実務上きわめて有効です。
5. 第三者委員会や監査体制を設ける
法人内部に第三者委員会や監査体制を設けることも推奨されます。弁護士や税理士を含む外部専門家による監査を行うことで、法人運営の透明性を高め、不正の抑止効果を得ることができます。