Column

「特別利害関係人」――決議の公正を揺るがす影

医療法人の内部対立では、「誰が議決に加われるのか」という点がしばしば争われます。

その核心にあるのが、「特別利害関係人」という概念です。

たとえば、理事の解任、社員の除名、役員報酬の決定など――自分自身の地位や利益に直接関わる議題では、当該者をそのまま議決に参加させることはできません。

なぜなら、当人が票を投じることで自己の利害を守るために決議を歪めるおそれがあるからです。

これを排除し、決議の公正性を確保するための仕組みが「特別利害関係人の除斥」です。

"特別"な利害とは何か

医療法人法には会社法ほど明確な条文規定はありませんが、判例・学説上、社員総会においても特別利害関係人の議決権は制限されるとされています。

特に、除名や理事長解任など「個人の地位に直接影響を与える議題」では、当該者を定足数や議決権に算入しないのが通例です。

これを誤ると、決議そのものが無効とされるリスクがあります。

もっとも、現場では「利害関係があるか否か」の線引きが難しいことも多い。

単に関係があるというだけでは足りず、”特別”な利害――すなわち、「その決議の結果により自己の法律上の地位や財産的利益が直接変動する程度の利害」が求められます。

医療法人の場合、家族経営や親族理事が多いため、感情や人間関係が絡み、どこまでを除斥すべきかが極めてデリケートな問題になります。

公正な決議を実現するために

公正な決議を支えるのは、数の力ではなく、手続の透明性です。

特別利害関係人の除斥は、少数派を守るための防波堤であり、”信頼できる意思決定”を担保するための最低限のルールです。

医療法人のガバナンスに携わるすべての人に、この原則を理解しておいていただきたいと感じます。