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婚姻費用の減額調停――状況が変わったとき、どうすればいい?

「別居後の生活費(婚姻費用)を支払っているけれど、最近収入が減ってしまって苦しい」

「最初に決めた金額が、今の生活状況に合わなくなってきた」

――そんなご相談をよく受けます。

婚姻費用とは、夫婦が別居していても、離婚が成立するまで生活を維持するために分担すべき費用のことです。一般的には、収入の多い側から少ない側へ支払われます。

一度金額が決まると、ずっとそのまま続くように思われがちですが、実は「事情が変わった場合」には、減額の申立て(減額調停)をすることができます。

見直しができる「事情の変更」とは

「事情の変更」とは、例えば次のようなケースを指します。

  1. 支払う側の収入が大幅に減った(失業・転職・病気など)
  2. 受け取る側の収入が増えた
  3. 子どもが成人して扶養が不要になった
  4. 再婚や新たな扶養義務が生じた

こうした変化があれば、もともとの金額を見直すことが可能です。

申立てから調停成立まで

家庭裁判所に「婚姻費用減額調停」を申し立てます。

必要な資料としては、最近の源泉徴収票、課税証明書、給与明細などの収入関係書類、住宅ローンや医療費など支出資料が挙げられます。

調停では、双方が現在の生活状況を説明し、合意できれば調停成立。不成立の場合は審判に移行します。

早めの行動が大切な理由

調停が成立したり、審判が出た場合、その効力は原則として申立てをした時点まで遡って生じます。

そのため、「生活が厳しい」と感じたら、早めに申立てを行うことが重要です。

注意すべき点とこれからの対応

減額が認められても、すでに支払った分が返ってくるわけではありません。単なる主観的な「苦しい」ではなく、客観的な収入減少を証明する資料が必要です。

裁判所は「婚姻費用算定表」を基準に判断します。

婚姻費用は、生活状況の変化に応じて見直すことができる制度です。

支払いが難しくなったときは、放置せずに「減額調停」を検討しましょう。

申立てを行えば、原則としてその時点まで遡って減額の効力が生じます。