Column

都心不動産は、もう「家」ではない? ――いま起きている変化と、考えておくべきこと

弁護士として資産承継や顧問業務に関わる一方で、産業医として人の働き方や暮らしの変化も見てきました。

その両方の立場から見て、今の都心不動産は、はっきりと性格が変わったと感じています。

「住むための家」から「価値を保つ資産」へ

ここ数年、都心の一等地マンションが「分譲時の2倍、3倍の価格で売れる」という話を珍しく聞かなくなりました。

これを単に「バブルだ」「投機だ」と片付けてしまうのは、少し短絡的だと思っています。

今、都心の限られた物件は、次のような性質を持っています。

  1. 数が増えない
  2. 立地は代替できない
  3. 欲しい人は世界中にいる

感覚的には、金(ゴールド)や、限定生産の高級車に近い存在です。

「古くなるから価値が下がる」という発想が当てはまらず、時間が経っても価値を保ちやすい資産として見られるようになってきました。

気をつけたい「制度の変化」

一方で、実務をしている立場として、注意しておきたい点もあります。

不動産を使った節税については、ここ数年でルールがかなり厳しくなっています。

特に、

  • 買ってから間もないうちに
  • 相続や贈与が起きた場合

「買ったときの価格」と「実際に売れそうな価格」の差を、より重く見られる傾向があります。

ここで大切なのは、「どうやって税金を減らすか」だけを考えないことです。

それよりも、増えた価値をどう守るか、次の世代にどう渡すかを、時間をかけて考えることの方が重要になっています。

最近では、個人で持つよりも、法人を使って整理するという形が、ごく普通の選択肢になってきました。

資産と暮らしの、ちょうどいい距離感

産業医として感じるのは、資産が増えることは安心を生む一方で、「縛られる感覚」も生みやすいということです。

駅直結のタワーマンションや、大使館のそばの低層レジデンスは、確かに特別な存在です。

ただ、それを「守ること」だけに意識が向きすぎると、人生そのものが窮屈になることもあります。

含み益が大きくなった今だからこそ、

  • 趣味
  • 医療
  • 教育
  • 時間の使い方

に目を向ける余地が生まれます。

資産は、人生を広げるための道具であって、守るために人生を削るものではありません。

冷静な見直しと備えを

「今は高すぎるのか、まだ上がるのか」

これは誰にも分かりません。

ただ一つ言えるのは、感情ではなく、情報と準備が結果を分けるということです。

市場に振り回されるのではなく、自分の持ち物を冷静に見直し、必要な備えをしたうえで、動くときは動く。

そんな姿勢が、これからの時代の”強さ”なのだと思います。