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人身事故にするには「人身にします」と言えば足りるのか

交通事故でケガをした場合、「人身事故にします」と警察に伝えればそれで足りるのでは、と思われがちです。

制度の建付けだけを見ると、確かに被害者の意思表示が出発点になります。

しかし、実務上はそれだけでは完結しません。

なぜ診断書の提出が必要なのか

警察が事故を「人身事故」として正式に処理するためには、医師の診断書の提出が必要になります。

これは警察が加害者の処分(刑事・行政)を判断するにあたり、

  • 実際に負傷があるか
  • どの程度のケガなのか
  • 業務上過失傷害等に該当するか

といった点を、客観的資料で確認する必要があるためです。

そのため実際の流れは、

  1. 人身事故としたい意思を伝える
  2. 診断書の提出を求められる
  3. 診断書が受理されて初めて人身事故扱いになる

という形になります。

この点を理解していないと、「人身にすると言ったのに、まだ物損扱いのまま」という事態が生じますが、その原因の多くは診断書未提出です。

なお、警察から「加害者の処分についてどうしますか」と聞かれることがありますが、これは民事上の示談とは無関係で、最終的な判断は警察・検察に委ねられます。

「警察・検察にお任せします」と回答しても、何ら問題はありません。

 

感情ではなく、制度的な判断として

重要なのは、人身事故として処理されることで、保険上も人身事故として扱われる点です。

これにより、治療費や慰謝料、休業損害などの請求が正しく検討される土台が整います。

人身事故への切替は、感情の問題ではなく、将来の不利益を防ぐための事務的・制度的な判断といえます。