夫婦関係が破綻する原因として、「対話拒否」という言葉が使われることがあります。
しかし実際の家庭では、必ずしも「話し合いを一切しない」「口をきかない」といった露骨な拒否が起きているわけではありません。
むしろ多くの場合、会話は成立しているように見えながら、協議が成立しない状態が長期間続いています。
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夫婦関係が破綻する原因として、「対話拒否」という言葉が使われることがあります。
しかし実際の家庭では、必ずしも「話し合いを一切しない」「口をきかない」といった露骨な拒否が起きているわけではありません。
むしろ多くの場合、会話は成立しているように見えながら、協議が成立しない状態が長期間続いています。
一方が次々と話し続け、相手は途中で遮られる。
話題はすり替えられ、都合が悪くなると「その話は終わった」と一方的に打ち切られる。
このようなやり取りが繰り返されると、もう一方は次第にこう感じるようになります。
「どうせ言っても無駄だ」
「話しても聞いてもらえない」
「反論すれば、さらに強い言葉が返ってくる」
そして最終的に、沈黙を選ぶようになります。
これは「対話拒否」ではなく、対話を奪われた結果としての沈黙です。
裁判実務では、「話し合いをしなかった側」に問題があるかのように語られることがあります。
しかし、沈黙は多くの場合、強圧的な議論構造の結果として生じます。
この積み重ねにより、夫婦間の協議機能は静かに失われていきます。
もう一つ、夫婦関係を深く蝕むのが金銭に関する不透明さです。
通帳や家計は一方が管理していても、
これらは単なる金銭トラブルではありません。
将来を共に設計するための前提が崩れるという意味を持ちます。
夫婦の緊張関係は、家庭の中で必ず空気として現れます。
そしてそれを最も敏感に感じ取るのは、子どもです。
子どもは状況を評価しようとしているのではありません。
ただ、日常を観察しているだけです。
その観察は、ときに夫婦関係の破綻を最も端的に示します。
法律は、離婚理由として「婚姻を継続し難い重大な事由」を定めています。
それは、暴力や不貞といった極端な出来事だけを指すものではありません。
こうした状態が長期間続いたとき、婚姻はすでにその本質を失っています。
夫婦関係は、ある日突然壊れるわけではありません。
多くの場合、話しているのに伝わらない時間が積み重なった結果です。
沈黙は拒否ではなく、防御であり、限界のサインです。
もし今、
「最近、話し合いができていない」
「言うのをやめてしまった」
そう感じているなら、それは関係が静かに危機を迎えている合図かもしれません。