Column

家庭内のモラルハラスメント ― 夫婦関係が静かに壊れていくとき ―

夫婦関係が破綻する原因として、「対話拒否」という言葉が使われることがあります。

しかし実際の家庭では、必ずしも「話し合いを一切しない」「口をきかない」といった露骨な拒否が起きているわけではありません。

むしろ多くの場合、会話は成立しているように見えながら、協議が成立しない状態が長期間続いています。

話しているのに、話し合いにならない ── 沈黙の本当の理由

一方が次々と話し続け、相手は途中で遮られる。

話題はすり替えられ、都合が悪くなると「その話は終わった」と一方的に打ち切られる。

このようなやり取りが繰り返されると、もう一方は次第にこう感じるようになります。

 

「どうせ言っても無駄だ」

「話しても聞いてもらえない」

「反論すれば、さらに強い言葉が返ってくる」

 

そして最終的に、沈黙を選ぶようになります。

これは「対話拒否」ではなく、対話を奪われた結果としての沈黙です。

裁判実務では、「話し合いをしなかった側」に問題があるかのように語られることがあります。

しかし、沈黙は多くの場合、強圧的な議論構造の結果として生じます。

  • 意見を述べると否定される
  • 論点がずらされる
  • 結論だけが押し付けられる

この積み重ねにより、夫婦間の協議機能は静かに失われていきます。

お金の問題は、信頼の問題

もう一つ、夫婦関係を深く蝕むのが金銭に関する不透明さです。

通帳や家計は一方が管理していても、

  • 収入の一部が別管理で、その金額や使途が説明されない
  • 学費や生活費について約束が守られない
  • 保険や仕送りが、制裁のように一方的に操作される

これらは単なる金銭トラブルではありません。

将来を共に設計するための前提が崩れるという意味を持ちます。

子どもが感じ取る緊張関係

夫婦の緊張関係は、家庭の中で必ず空気として現れます。

そしてそれを最も敏感に感じ取るのは、子どもです。

  • 怒られないか常に気にする
  • 家の中が落ち着かない
  • 言い争いが「普通」になっている

子どもは状況を評価しようとしているのではありません。

ただ、日常を観察しているだけです。

その観察は、ときに夫婦関係の破綻を最も端的に示します。

法律が認める離婚理由とは

法律は、離婚理由として「婚姻を継続し難い重大な事由」を定めています。

それは、暴力や不貞といった極端な出来事だけを指すものではありません。

  •  協議が成立しない
  • 信頼が回復しない
  • 家庭が安心できる場ではなくなった

こうした状態が長期間続いたとき、婚姻はすでにその本質を失っています。

夫婦関係は、ある日突然壊れるわけではありません。

多くの場合、話しているのに伝わらない時間が積み重なった結果です。

沈黙は拒否ではなく、防御であり、限界のサインです。

もし今、

「最近、話し合いができていない」

「言うのをやめてしまった」

そう感じているなら、それは関係が静かに危機を迎えている合図かもしれません。