Column

政治家と弁護士の本質的な違いとは

政治家が目指す「多数への対応」

近年の農林水産大臣の人事を見ていると、その入れ替わりの早さには驚かされます。初代の石破派政権下で就任した大臣は、まさかの選挙落選、比例復活も叶わず政界を去りました。その後に就任した大臣は「米を買ったことがない」という発言で波紋を呼び、現職は小泉進次郎氏。彼は環境大臣時代にビニール袋の有料化を推進し、国民生活に大きな影響を与えたことが記憶に新しいところです。

弁護士の「個」への向き合い方

こうした政治の動向を見ていると、やはり政治家と弁護士は似て非なる職業であると強く感じます。政治家は、本来なら「減税」で対応すべきような場面でも、あえてコストをかけてバラマキ政策を行う傾向があります。無駄な定額給付金や使われないマスクの配布など、その背景には「多数への迎合」という姿勢が垣間見えます。

一方で、弁護士が向き合うのは「多数」ではなく、目の前の「依頼者」です。たとえ社会全体が左を向いていたとしても、依頼者が右を向いていれば、弁護士は右を向く。それが職業倫理であり、信義則の根幹をなすものです。

ただし、弁護士も誰にでも寄り添うわけではありません。依頼者が誠実であり、信頼関係を築けることが前提です。虚偽の説明をしたり、自ら問題解決に真剣に向き合おうとしない方に対しては、たとえ優秀な弁護士であっても、その力を十分に発揮することは困難です。依頼者が弁護士を選ぶのと同様、弁護士も依頼者を選ぶという相互的な関係が必要です。

しかし近年では、そうした選別をせずに安易に受任する弁護士も増えてきたように感じます。その結果、弁護士と依頼者とのミスマッチにより、法的意義に乏しい訴訟が増加しているのも事実です。

MIA法律事務所が大切にする信頼

当事務所(MIA法律事務所)では、顧問業務を中心に対応しておりますが、明らかに争う余地のない事案に対し、相手方弁護士から訴訟等を提起されるケースが増えてきております。このような不必要な紛争の発生は、依頼者と弁護士の間での適切なマッチングがなされていないことにも起因しています。

無益な争いを減らすためには、弁護士も依頼者も、いま一度原点に立ち返ることが求められます。互いの信頼と目的が一致した関係こそが、法の健全な運用と真の意味での「正義」の実現に繋がると、私たちは信じています。