Case Study

個別指導前に不安を感じた医療機関への支援と、再発防止を見据えた対応

ご相談内容

「個別指導の通知が届いたものの、これまで特別な準備はしてこなかった。日々の診療に追われるなか、カルテの記載もテンプレート的な内容が多く、指導でどのような指摘を受けるのかが不安だ。何か対応をしなければと思いながらも、どこに相談すればよいのか分からなかった……」

このようなご相談を、医療機関から多くいただいています。個別指導に対応できる弁護士を探しても見つからず、情報も限られている中で、当事務所にたどり着かれるケースが少なくありません。

初動対応と事前の整理

まずご案内したのは、「過去のカルテを後から追記・修正することは避けるべき」という点でした。こうした対応は、仮に善意であっても法的には問題とされる可能性があり、注意が必要です。具体的には【偽造】と判断された場合には厳しい処分に繋がります。

そこで、現時点での記載内容をもとに、指摘を受ける可能性がある点を丁寧に整理し、指導当日に想定される質問とその回答を、実際のやり取りを想定しながら検討しました。
加えて、事前の練習(模擬個別指導)も複数回行い、当日、必要以上に緊張せず対応できるようサポートしました。
このような相談を受けた場合にはこの【模擬個別指導】を必ず行います。医療機関によっては3回も4回も事前打ち合わせを求めて来ますがその全てに丁寧に対応します。

個別指導をめぐる背景と実務上の注意点

個別指導では、診療内容そのものよりも、「それがどのように記録されているか」が問われます。
特に開業間もないクリニックや、多忙な日常業務をこなす医療機関では、診療報酬の算定実務に意識が集中し、カルテを第三者に見せる前提で整備するという意識は、どうしても後回しになりがちです。

こうした状況は決して珍しいことではなく、むしろ多くの医療機関に共通する点です。テンプレートや定型記載が中心であっても、診療報酬の算定根拠として一定の整合性が保たれていれば、必要以上に恐れることはありません。ただし、誤解を避けるためにも、どのような意図でその記載をしているのかを言葉で補足できる準備が重要になります。

また、行政からの質問は一見何気ない内容であっても、返答の仕方によっては誤解を招くことがあります。なかには、善意の回答がかえって不利な受け止められ方をしてしまう場合もあり、事前に想定問答を練習しておく意義は大きいといえます。

その後の対応と報告書作成

個別指導当日が終わっても、対応は終わりではありません。
通常、1か月~2か月後に「結果通知」が届きます。その内容に基づいて提出する改善報告書の作成は、形式的なものに見えて実は極めて重要です。報告内容に不備があると再提出を求められることもあり、内容次第では返金の範囲や金額にも影響します。

今回のケースでも、指摘事項の背景を的確に整理し、記載上の改善点をどのように実行に移すかについて、書面上で丁寧に説明を行いました。結果として、報告書は一度で受理され、返金対応も過度なものとならずに済みました。

結果と今後の展望

これまでに対応した全ての個別指導において、個別指導に向けた準備から当日の対応、改善報告書まで一連の支援を行い、結果的に監査への移行や処分を受けることなく、無事に終了することができています。

現場の忙しさや記録体制の難しさは、どの医療機関にも共通する課題です。重要なのは、どこで立て直し、どのように適切な対応を積み重ねていくかという点に尽きます。